体験するアイドルから音楽とダンスについて1 -前置-


本物のアイドルと生で会って、同じ空間で同じ時間を過ごす体験は、他に代えがたい貴重なサムシング。それはもろもろのハードルを飛び越えた猛者が、猛者故に得られるスペシャルなサムシングであって、誰もがハードルを飛び越える魅力をそこに求めるのは中々難しい所がある。


個人的に物凄くかっこ良くて泣けてくる、東京女子流もTomato n' Pineも(奇しくも両方遅めのBPM)曲が良く出来てれば出来てるほど、ライヴにはライブのよさがあるとは言え、音源を100とした完成度の尺度で自動的に考えてしまう。息切れやダンスの拙さが逆にプラスになる特殊なバトルゾーンとは言え、それはあくまで心の砦が陥落した共犯者達にとってのボーナスポイントで、自分の娘の運動会での頑張りが、第三者と共有できる魅力であるかを客観的に見れるかどうか、詳しければ詳しいほど疑わしい。
CDやDVD(Ustは一旦置いておいて)を超えたプラスアルファがあって始めて、またライヴに来たいと思えるのではないか。その殆どはアイドル自身の人間的魅力による所が、その多くを占めるのは言うまでもないでしょうが。しかしだからこそなのか、俺にとってマックスは音源であることが多い。


だが何故だろうか、ライヴに行って以来i-Podで聞くももクロが、世界最強を決めないMMAのように腑抜けてしまった。これは想定外だ。まさかとは思うが、具体的な音数が減っている。実際に楽器を演奏する音楽、また音源では打ち込みの部分をギターやドラムに変えて演奏するライヴを見た時に似た様な感覚を持ったことはあるが、彼女たちは楽器を弾かないし、アレンジも変わらない(多分)。それどころかライヴでは、声も入った音源の上から歌っている状態で、彼女たちがライヴでアレンジできる領域は限り無く小さい。なのに何故か音数が減っているのだ。

最初に気になったのは、CD,mp3で聞いてもピンとこなかった曲まで、ライブで聞くとすげえいい曲に聞こえた事。とは言え、その時は「ああ俺も遂に彼女たちの魔法にかけられて、客観的な評価が出来ないくらい酩酊してるんだな」と思っていたが、ココに来て彼女たちの音源に以前感じていた音数の多さを、感じなくなってしまっている事に驚きを隠せない。酔っ払ってるならむしろ、ダメな部分が輝いて見える筈だし。PAにあてられるような純情な感情は、せつなさよりも遠くへいってしまっている。そもそも音源派なのに俺…



体験するアイドルをスペシャルなものにする鍵になるのはダンス。それも踊りそのものに対する理解でなく、ダンスと音楽の関係。よく言う、「歌って踊る」というものへの理解についてだ


コレには自分の中で段階があり、多分Perfumeのダンスが今までTVで見たアイドルの文脈と違う、強烈に音楽と文脈を共有したパフォーマンスをしている。という感覚が早い。おそらくあのベクトルの振付・衣装でなく、音楽を聞いたら魅力は結構下がる。もちろんアクターズスクール以降、振り付けに割かれるリソースは格段に上がっただろうし。それが脱アイドル的アングルに見えるのは指摘してもいい。


その後K-POPを見たときに感じた、パフォーマンスによって曲のクオリティが上がっているかのような体験は、誤解を恐れずに言えば「海の向こうに安室奈美恵が9人いるぞ」って素裸で町内を一周しながら心のドアをノックして回って捕まる気持ちがあった。


前にMOGRAでやっていた、Geeというイベントで言っていたのだけど、フォーメーションの中で堂々と歩いて後ろの列に加わる動きを「スタスタ感」と呼んでいたが(詳細は各自調査)もはや殆どファッションショーのようで。前にLifeというラジオ番組で鈴木謙介が言っていた、突然フロアにバタンと倒れこむタイミングも込みでダンスになっている、というグルーヴに関しての話があり、その場では澁谷知美さんが、アイドルは押しなべて振り付けなので、東方神起に突然フロアに大の字になられても困ると言っていたが「スタスタ感」及びK-POPのダンスにある「抜き」に関しては、鈴木謙介の言っているダンスに限りなく近く見える。


勿論そんなのは倒錯で、振り付けに決まってるんだけど。スタスタしてる時の彼女たちはまるで、振付から離れグルーヴを獲得したかのように感じさせた。それはパフォーマンスが音楽を食い、音楽がダンスをクリティカルに捉える瞬間の発見で、そのくらい俺は海の向こうのアイドルに酩酊していたと言える。


勿論それ以前から、そういった体系は存在していたのだろうが、個人的な体験としてはPerfumeからK-POPへが決定的。とは言えK-POPに置けるダンスのクールネスは、少女では無く自立した女性のパフォーマンスであろう事は、何となく想像でき。日本のアイドルとは、一人では何も出来ない少女が大人にやらされてる(実年齢的な意味でなくロリコン)という、女性の自発・自立を嫌い、痴漢されても黙って我慢してしまう所に萌えてしまうような、かなりヤバい欲望に支えられるドメスティックな市場を命題にしたプロダクトで、基本的に違う。
その為K-POPを日本アイドル体系で捉えるには個人的な体験を除けば、些かアクロバティックな接続を要するだろう。しかし全くホツレがないかといえば、そうでもないし(多分個々は事務所を訴える人もいるくらい自立した女性なんだけど、俯瞰でキャッキャしてるとまるで少女)。安室、MAX、SPEED以降のアクターズスクール的かっこいい風の素地が、海賊版YouTube的経路で影響を与えたことを全く無視するものでもない。


うーーん、アイドル語りをしようとしたら、前置きだけで2000字…。ももクロちゃんはピンクレディを祖に置くと正統派なのではって話が全然出てこないっ(しません
http://d.hatena.ne.jp/ATOM-AGE/20110420/1303278682