円周率で君を包む街

風景画のような風景に
旗を抱える旅立ちの情景
後ろ髪を引かれるような戸惑いも無く
憐憫の思いが鼻腔を擽る
今倒壊するビルの屋上に
ふらふらと揺蕩う君の
唇を読み上げようと
必死にもがくけれど
僕は
「愛してるなんて言ってねぇ」
額縁がズレ落ち
焦点調整が瞬く間に
転がった芋虫を
薄手のゴム製手袋をした右手の
ピンセットで掴み
誰だお前
と、愛の言葉を囁いた
眉間に皺が寄る